小学生の頃

小学生の、特に1、2年生の頃、俺は先生のことがよく分からなくて、その分からない部分を少し馬鹿にしていた。と言っても、おそらく俺が世の中を分かってないことも多かった。その中でわりかしよく覚えていて、今考えるとなんとなく分かることと今考えてもよく分からないというか難しい感じがすることを一つずつ書く。

今考えると意味が分かるのは体育の時の話。
俺は球技が嫌いだ。これは小学校低学年の頃の球技が大体悪い。当時授業でやらされたサッカーとかバスケは、ボールの回りに集って手とか足でボールをどうにか集りの外に弾き出そうとする楽しくない遊びだった。そしてボールも人の手足も当たると痛くてまあ嫌だった。他の子もたぶん同じよう人とかボールとかにぶち当たっていたので、不定期に痛さかなにかで泣き出す子がいた。そうすると授業が中断して、女の子がみんな泣いてる子の回りに集まって大丈夫?保健室行く?とか言って肩を撫でる時間があって、それも嫌いだった。いや、大丈夫か聞く最初の栄誉が得られたらいいですよそれは。二番手とか三番手も同じこと言ってもいいかも。でも、学年の中で物事についていくのが激遅のぼんやりした人間である俺が声かけるくらいの頃にはもう大体のことは言い尽くされていて、何を言えばいいか、さっぱり分からなかった。泣いてる子の周りを囲む女子のさらに外側を困ってうろうろしていた。何を言えばいいか分からない結果性格の悪さを自分で慰めるために後付けで、そんなに大怪我だったら代わる代わる大丈夫か聞いたり背中を撫でることに意味はなく、今すぐに救急車を呼ぶべきで、それが起こってないということは全然大丈夫だから、そんなに大仰に心配する必要はないと思っていた。性格悪い。まあそんなわけで、俺は痛くて授業を休んで保健室に行きたくなっても泣いたりしないぞと思っていた。
そして、サッカーの授業中に早生まれの大柄な子に思い切り蹴られて、ついに泣きたいぐらい痛い瞬間が訪れた。俺は泣かないぞと思っていたので実際ほとんど泣かずに、スッとボールに集る集団から抜けて先生に足が痛いので保健室に行きたいですと言いに行った。ところが、先生は駄目だと言ったのである。どう見ても大したことがないから、このまま授業に参加しなさいと。いやいやいや、この間泣いてたあの子も大したことなさそうだったのに?泣いて授業をストップした後何人かに付き添われて保健室行ってたのに…?俺が衝撃を受けて、でも、足が痛いですというようなことをもごもご言うと、先生は仕方なさそうに、どうしても参加したくないなら見学していなさい、でも、保健室には行く必要はないよねと言った。俺は体育館の隅っこで膝に顔をうめて泣いた。元々痛くて泣きそうな所我慢して先生に訴えたのに、裏切られたような気分だった。先生の考えがさっぱり分からず、恨むような気持ちも沸いてきた。その授業の終わりには途中から隅っこにいたけどどうしたのとか友達に言われて惨めに感じたりして、だいぶ先生を嫌いになった。僕はここで、みんなの前で泣かないと学校では願望が叶わないということと、体育の授業での痛みは思ったより大したことがなく人に伝えると恥をかくという2つの間違った学びを得てまた別の恥をかいたのだけれど、それはまた別の話である。
今考えるとこうだったのではと思うのは、先生は泣いて授業をストップすることについてもよしと思っていなかったし、そういう場合も保健室に行く必要性はないときちんと把握していたんじゃないかということだ。ただ、泣いてる子と優しさで慰めてる周りの子達に今すぐ泣くのも慰めるのもやめて授業を再開しろと言うのは冷徹な感じになってしまうし、先生に対する反感を多くの生徒が持ってしまいそうだから、分かっててなにも言わなかったのではないか?あの頃は先生って権力を持ってると思っていたし、言うことに皆が従うと思っていたけど、全然そうではない。生徒がなんとなくの積み重ねで反感を溜めただけで学級崩壊が待っているし(3年のときに産休明けの担任に対する微妙な反感から学級崩壊した)、親に妙なことを告げ口されたら不味いことになる。たぶんこういういろいろな機微があって、先生があえて口出ししない問題みたいなものが色々あったんだろう。で、僕はそれを見てこんなことも分からんとは先生って馬鹿だなと思っていた。その苦労を思うと敬意までは沸かないけれど色々な納得できなかったあれこれのほとんどを許して労いまでできる感じがする。僕は誰だ?そこまで偉いか?

今でも分からんし難しい~~けどもう少しどうにかなったのではと思うこと。
これはいじめの話。前の下りで当時から性格が悪かったのが分かるとは思うけれど、これはもっと悪いかもしれない。分からん。いじめ問題のほとんどが僕はいまだによく分からない。
俺の学年で1人、お調子者で調子に乗りがちで、でもその結果起こった問題を他人に押し付けたりするちょっとうるさい子がいた。その子がある日、苛められていると先生に訴えて、学級会議が開かれたことがあった。訴え曰く、自分はみんなに無視されて、遊びの仲間にいれてもらえないと言うのである。確かにこれはその時実際起こっていたことで、正しかったし先生に色々言われて(その人がいじめだと思ってたらいじめ、それを傍観してるのもまたいじめ、自分のことだと思ってちゃんと考えて、みたいなね)その子に謝って、問題は終わった。でも違う。その前にその子が無視されるに至った事件があったのである。あるとき、休み時間に学年のみんなで掃除か何か、忘れたけどとにかくやらなくてはならないことがあった。でも、その時何かの理由で先生の監視がなかった。加えて、いつもは遊んでいい時間だった。遊びたかった我々は学年の全員で同意して、各々好きに遊んで過ごして先生には言われたことをやってないのを黙っていた。しかし、そのお調子者の子が先生に告げ口したのである。皆が遊んで過ごして先生には黙っているというのに合意したときその子は全く反論しなかったし、むしろ進んで遊ぼう遊ぼうみたいなこと言ってて、その時間もずっと遊んでいたのに!告げ口したのだ!これがはっきり覚えているいちばん大きなきっかけだったけれど、それ以前にももっと小さな色々な告げ口があったと思う。だから、僕のクラスの人間はその子に告げ口されないように、特に不都合の絡む遊び(例えば廊下での鬼ごっこ)にはその子を誘わなくなった。当然じゃないですか?僕には少なくともいじめという意識は全くなかったし、今もない気がする。だって不都合のない遊びには普通に誘ってた気がするし、ただ、その子をさそうと面倒なことになりそうな物事は黙ってたというだけだ。ただ、所詮は子供の隠し事だから僕ら全員のそのこそこそしたあれこれはその子にばれていて、その子がまた先生に告げ口しただけである。いやこれがいじめか?当事者はいじめだと思ってるしいじめなのか?でも、僕らもあの子に散々辛酸嘗めさせられたというか、先生とか親に怒られたのだけど。一方的にあの子が被害者面してたのが納得いってない。真面目な子で自分はルールを破らないもしくは渋々誘われて破ってそれを先生に報告して、で、それを僕らが無視し始めたらいじめだねそれは。でもそいつはむしろ率先してルール破ってもの壊したりしてたのに、自分は悪くないかのように先生に告げ口してたから。
あと、さっき書いたやつは小学校1年か2年のことだけれど、小学校5年のとき給食中の教室内でその子がふざけて走っていて、ゴミ箱の側面に頭から突っ込んで怪我をしたときも、何故か僕らが彼をいじめていて、突き飛ばしたということになった。いや、確かに後ろから突き飛ばされたせいでゴミ箱に衝突して、割れたゴミ箱で頭を切ったかもしれないけどいじめられてたからではなくて、何人かでふざけておいかけっこしていた結果だったはずなのに。今思うと、給食の時間にふざけた結果の怪我を怒られるのを避けたかったが故の嘘だった気がする。そのときはその子の親が言い分を信じてしまったから問題がでかでかにでかくなってしまって何度も何度もした覚えのないいじめについて責められる学級会が開かれて最悪だった。
僕らいじめた側が100悪いことになってたのが納得いかねんだ今でも。いじめとは?誘惑に負けた僕らが悪いのか?そんなことがあったから、いじめに関する意識アンケートでいじめられるほうが悪いこともあるみたいな設問にそう思うとチェックを付けたら先生に呼び出されて、問いただされ、動揺した僕は間違えました。と言って消しゴムでチェックを消して、そんなことは全く思わないに書き直した。これ、今思うと闇が深くない?
経験上では、いじめられてると言ったやつがあまりに有利過ぎて面倒くさいけど、自分がいじめられたらみんなにすんなり信じて欲しい。あと、面倒くさいで済んでるということはいじめた方のペナルティってめちゃくちゃ軽くて、マジのいじめだったらフェアではない。ペナルティの軽さにも僕らが被ったような双方悪い場合にも特に対処は思い付かない。難しい。